経営者の集まりでは「人材育成」の話題や相談が多い。先行き不透明の環境下では優秀な人材をそろえておきたいとの思いが強い割に、なかなか確保が難しいか らだ。経営環境の変化や技術の発達で必要な人材は、中途で採用して埋め合わせるやり方がいいと言われるが、適材は容易に見つからない。かといって新卒社員 を計画的に採用し経営幹部まで育てる方法も、著名人の講演を参考にする方法や団体の主催する研修講座に派遣する等を試みても、置かれている状況が違うので 費用と期間をかけた割に結果がいいとは限らない。
「全社員、1つ以上の資格取得を!」の目標を掲げた人材育成が、企業イメージを高め販売に大きく貢献した経験がある。マイクロソフト社のウィンドウズ 95が発売されたころ、世界的にパソコンスキルを客観的に評価するライセンス制度のニーズが高まった。メーカーやIT関連団体が独自の制度を作り、ワープ ロのインストラクター、ネットワーク技術者、ハードの修理資格等、流通業者や販売店が取得を競った時期に、国家資格をはじめ、ハードメーカーやソフトメー カーの資格を、1人平均3ライセンスを取るまでになった。メーカーからの高評価で取引条件も改善され、地元ユーザーからの信頼感も高まり売り上げにも貢 献、さらに社員の技術や知識への自信、仕事への意欲も高まった。
しかしウィンドウズ2000が発売されるころには、ハードのモデルチェンジやソフトのバージョンアップのサイクルも短縮され、更新のコストもかさみ同業 者への優位性も薄れた。企業経営を取り巻く変化は激しく、育成の方法もその時期や状況に見合った臨機応変さが要求される。
社員にペルー3世や「シマナイチャー」の中堅幹部がかなり増えてきた。県外・海外での仕事や生活経験のない社員が、異質の感性を備えた同僚と日常業務の なかで切磋琢磨し、新鮮な体験を重ねることで顧客の要望に、高い水準で対応できる人材が育つ。即効性や目に見える効果より、地道でも自発性のある創造的な たくましい人材を育てたい。
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